ウクライナ戦争により、ヨーロッパの経済は大きな変化が生じています。
特に、EUの経済を牽引してきていたドイツ経済の現況に関して

ドイツは、1990年の東西ドイツ統一後に、経済成長が停滞し、失業率が上昇したことから、「ヨーロッパの病人」と呼ばれました。
この時期のドイツ経済は、以下の3つの要因によって低迷しました。
- 東西ドイツ統一の負担
東西ドイツ統一によって、ドイツは経済的に大きな負担を背負いました。
旧東ドイツ地域は、旧西ドイツ地域よりも経済的に遅れていたため、統一によって旧東ドイツ地域の経済を立て直すための巨額の資金が必要となりました。
また、旧東ドイツ地域の労働市場は硬直化しており、失業率の上昇に拍車をかけました。
- 労働市場の硬直化
ドイツの労働市場は、解雇規制が厳しく、労働者の流動性が低いことが特徴です。
そのため、景気悪化時には企業が人員削減を躊躇し、失業率が上昇しやすくなります。
- 輸出需要の伸び悩み
ドイツ経済は、輸出がGDPの約4分の3を占める輸出大国です。
しかし、1990年代後半には、世界経済の成長が鈍化し、ドイツの輸出需要も伸び悩みました。
2000年代以降、ドイツ経済は徐々に回復し、2010年代には「ヨーロッパの一人勝ち」と呼ばれるまでに成長しました。
しかし、2023年現在、ドイツ経済は再び低迷しており、再び「ヨーロッパの病人」と呼ばれ始めています。
その原因は、以下の3つが挙げられます。
- ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰
ドイツは、ロシアから天然ガスを大量に輸入しています。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻によって、欧米諸国はロシアへの経済制裁として、ロシア産エネルギーの輸入を制限しました。
そのため、ドイツはエネルギー価格の高騰に直面し、経済成長に悪影響を及ぼしています。
- 新型コロナウイルス感染症の拡大
新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界経済に大きな打撃を与えました。
ドイツ経済も例外ではなく、2020年にはGDPがマイナス5.7%と、第二次世界大戦以降最大の落ち込みとなりました。
- 気候変動対策によるコスト増
ドイツは、気候変動対策に積極的に取り組んでいます。
しかし、気候変動対策には、コストがかかります。
ドイツ政府は、2030年までに化石燃料の使用を大幅に削減することを目指しており、そのための投資を進めています。
しかし、これらの投資は、短期的には経済成長を阻害する可能性があります。
ドイツ経済は、今後もロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルス感染症の拡大など、さまざまな課題に直面することになります。
ドイツ政府は、これらの課題を克服し、再び「ヨーロッパの一人勝ち」の地位を取り戻すことが求められています。
今後の動向に注視していきたいものですね。