日本の半導体産業は復活できるでしょうか。
嬉しいニュースが入ってきました。
キオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行の8社が出資し、新しい半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」が設立されました。
最先端の半導体の量産を目指し、製造技術の開発はIBMなどとも連携するとのことです。
この会社へは、政府も700億円を投じて支援することになっています。
まさに、わが国半導体産業の起死回生を目指しているわけだが、一方で教訓にすべき事例もあります。
2012年2月に経営破綻したエルピーダメモリのことを思い出してください。
1980年代半ば、わが国の半導体産業は全盛を極め、世界市場を文字通り席巻していました。
ところが、
この状況を好ましく思わなかった米国から強力な横槍が入ってきたのです。
日米半導体協議で、わが国の半導体メーカーは足かせをはめられ競争力を失うことになってしまったのです。
その後、産業構造の転換は遅れ、今やIT後進国ぶりも鮮明になってきていまだ。
新会社のラピダスの狙いは、半導体をはじめとする先端分野で、わが国企業を復活させることです。
現在のように、国内で最先端チップを生産できない状況が続けば、わが国経済の競争力はさらに低下することは避けられないという危機感が背景にあります。
ソニーとデンソー、台湾積体電路製造(TSMC)の合弁企業が熊本県で生産する予定である22~28ナノメートルのチップを飛び越え、ラピダスは2ナノプロセスの確立を掲げています。
まさに、わが国半導体産業の起死回生を目指しているのです。
ただし、
ラピダスが計画通り最先端チップを量産できるかは、今のところ楽観できない状況にあります。
予定通り2ナノプロセスの量産が始まった時点で、TSMCなどはさらに最先端のチップを量産している可能性が高いのです。
当面の注目は、ラピダス自身がいかに組織の集中力を高め、より早期に量産を始めることができるかが勝敗をきめることになります。
期待が大きいだけに後戻りはできません。
1990年代以降、米国企業は国際分業を加速させて、ソフトウエアの設計開発に集中してきました。
その結果、
スマートフォンをはじめとした新しい需要が創出されました。
アップルやエヌビディアはTSMCにチップの製造を委託し、経済のデジタル化も加速しています。
リーマンショック後、
中国は米国の最先端の知的財産や製造技術を急速に習得してきました。
アリババ傘下のアントフィナンシャルなどは、急速にフィンテック事業の運営体制を強化してきたのです。
TikTokなど新しいSNSプラットフォーマーも成長してきました。
それによって雇用が生み出され、中国のチップ需要は一段と増加してきました。
TSMCや韓国のサムスン電子、さらに米インテルも中国での事業運営体制を強化し、成長を遂げてきました。
一方、教訓にすべき事例もあります。
2012年2月に経営破綻したエルピーダメモリのことです。
1999年、NECと日立製作所のDRAM事業が統合されました。
翌年、社名はエルピーダメモリに変わり、2003年には三菱電機のDRAM事業も統合されました。
組織は一つになったが、出身母体ごとの規格、発想を統一することは難しかったのです。
結果として、
エルピーダメモリの収益性は上がらず、競争力は低下しました。
リーマンショック後は公的支援も実施されたましが、組織が一つにまとまることは難しかったのです。
最終的に、政府と企業が新しい半導体を生み出すのを放棄したことが、エルピーダメモリの経営破綻の一因になってしまったのです。
新会社ラピダスはエルピーダメモリの教訓を生かし、決して二の舞いになってはいけません。
次世代ロジック半導体の国内生産を実現できるか、わが国半導体産業が起死回生できるかは、ラピダス自身がいかに組織の集中力を高められるかに懸かっているのです。
日本の半導体産業の復活のために頑張ってほしいものです。